三重、愛知

2012年4月20日 朝日新聞 名古屋朝刊

看護師も「ホッ」 病院に医療通訳を派遣

愛知県が4月から、県内の病院に外国語の通訳を派遣する新たなサービスを始めた。東京に次いで外国人労働者が多く、通訳を求める医療現場の声に応えるためだ。24時間対応の電話通訳も用意して、支援に本腰を入れている。現場の看護師にとっても助っ人になりそうだ。

技師の指示をスペイン語で

4月中旬、愛知県大府市の「あいち小児保健医療総合センター」のX線室。診察に訪れた愛知県半田市の日系ペルー人の男性(41歳)の息子さん(3歳)の傍らで、通訳の女性(35歳)が「撮影時の姿勢」について、技師の指示をスペイン語で伝えた。ペルシーさんは「風邪なら私の日本語でも大丈夫だが、子どもは心配。通訳がいて助かった」。

4カ国語に対応

今月から始まった「あいち医療通訳システム」は、県や市町村、県医師会などでつくる事務局が運営している。計89人の通訳が登録していて、ポルトガル語、スペイン語、中国語、英語の4カ国語に対応。

24時間の電話通訳

予約が必要な派遣通訳のほか、文書通訳や24時間受け付ける電話通訳も行う。

費用は病院と患者で折半

料金は派遣が2時間3000円、電話通訳は20分1000円から。費用の半分は病院が負担し、残り半分は患者が負担する。現在、登録している県内36医療機関でサービスを利用できる。

今回、県が始めた派遣型サービスに似た制度は神奈川県、京都府でもあり、愛知県は全国で3例目。県は今年度中にさらに100人の通訳を増員する方針だ。

課題は費用負担

外国人労働者の多い愛知県では、すでに独自に通訳を雇っている病院もある。

豊田市

1992年から始めた豊田厚生病院(豊田市)は3人の通訳が常駐。当初から勤務するブラジル人通訳の女性(45歳)は「来日当初は若かった人も、高齢化が進み病院に通うようになった」。がんや糖尿病など病気の種類も増え、通訳の必要性は高まっている。

豊田厚生病院

2011年1年間の通訳件数は約1万件に上った。豊田厚生病院は「今や通訳なしで病院運営は成り立たない」と語る。

病院側の負担軽減が普及へのカギ

今後、県の通訳派遣サービスに登録する医療機関を増やすには、病院側の負担軽減がカギになると県医師会は指摘する。「現状では、簡単な診療だと、診療費より病院側の負担が高くなることもある。行政の支援強化も検討してほしい」と訴える。

また、神奈川や京都では原則的に患者の料金負担はない。外国人世帯には低所得層も多いだけに、患者負担の度合いも、サービスが定着するかどうかを左右しそうだ。

<愛知県の外国人労働者>

1990年の出入国管理法改正で、日系人は2世、3世まで職種の制限なく就労できるようになり、製造業が盛んな愛知県にはブラジル人を中心に多くの労働者が流入した。厚生労働省の統計(1993年10月末現在)では、愛知県は8万4157人で、東京都(16万7998人)に次いで全国2位となっている。